前編のオーリキュラの展示会 ■ は楽しんでいただけたでしょうか。
上の画像はウィズリーの 'Auricula Spectacular' というイヴェントからですが、
こんな風に、額縁に入れて飾るのも可愛いですよね♪
この日には、オーリキュラ協会の人のレクチャーや、
オーリキュラ専門ナーサリーの展示販売があります。
ガーデンセンターではいいオーリキュラは手に入らないので、
展示会に出かける機会がない人にとっては、
可愛いオーリキュラを手に入れるいいチャンスになります。
オーリキュラ愛好家たちは、
春になると自慢のオーリキュラを階段状になったシアターAuricula Theatreに飾って楽しみますが、
これはウィズリーのシアターもどき?でしょうか。
両側に並んでいるのは、展示販売の商品なのですけれどね。
(Calke Abbey theatre 画像はdailymailから拝借)
18世紀の大きなカントリーハウスにはAuricula Theatreが設置されているのが普通でしたが、
流行の移り変わりと共に消滅してしまい、今ではオリジナルのAuricula Theatreは
Calke Abbey(NT)に残っているだけだそうです。
でも、DIYの得意な人なら、本箱に防水のペイントを塗って屋根を付ければ簡単に作れそうですね。
(上の画像はそれぞれ , bramble-and-bean、 themagicgarden.webs.com、 growsonyou.com から拝借)
私自身がオーリキュラに惹かれるようになったのは、
随分昔、日本にいた頃に見た古い植物画に描かれた奇妙なこの花を見て以来です。
白っぽい粉を吹いたような葉っぱから伸びた茎の先に咲く
自然の造形とは思えないような可愛さと奇妙さが同居した小さな花は
いつか実物を見てみたいと言う好奇心を抱かせるものでした。
そう言えば、子供が初めて描く花の絵と言うのは、
真ん中に○を描いて、その周りを囲むように半円をクルクル描いていきますよね。
あれって、オーリキュラの花の形そのものだと思いませんか。
そういうシンプルそのものの花にいろんな絵の具を塗って、いろんなお花を作ってみたくなる・・・。
潜在的にどこかそんな小さい頃のお絵かきのような郷愁があって、
人々はさまざまなオーリキュラの花を作り出すことに熱中したのではないかしら。。。と、
勝手に想像したりしていますが、余りにもこじつけですかしらね。
画像は、これもウィズリーから。
ショーに出すのでなければ、ショーオーリキュラも添え木無しで気楽なもんです。
自分で楽しむのであれば、曲がってたって、へっちゃらさ~!
うちでは3~4年前の厳寒の冬とその後の2年続きの水浸しのため、
庭植えのオーリキュラは全滅してしまいました(-_-;)ので、
今のところ鉢植えのみを栽培しています。
一応National Auricula and Primula Societyの会員ではありますが、
ショーに出す気など更々ないので、もっぱらおおらかに育てています。
★日本の花友の一人から質問がありましたので、
オーリキュラの培養土について書いておきますね。
意外に思われるかもしれませんが、
ショーオーリキュラって、それほど土の配合に気を使わなくてもいいようです。
一番大事なのは、とにかく水はけのいい土を作る事のようです。
協会のメンバーの人たちは、それぞれ自分でホームメイドのローム土+腐葉土+シャープ・グリットを
配合したものを使っているようです。
一般愛好者は、ガーデンセンターなどで昔からある英国の配合土の
ジョン・イネスという土(No.1~No.3まであります)のNo.2 か No.3のローム土をベースにしたコンポストに、
グリットやパーライトなどを混ぜたのを使うことが多いですね。
メンバーの人たちから苗を分けてもらうと、
水遣りすると同時に鉢底から水が流れ出るくらいに水はけのよい土に植えてあります。
こちらでは日本のように赤玉やバークはまったく使いませんが、
前述のグリット(砂利の細かいようなもので、色やサイズがいろいろあり、アルパインやサボテン・サキュラント、
種まきから挿し木に至るまで、殆どすべてのガーデニング作業に使われます。)を使います。
ボーダーオーリキュラを地植えにする場合も、たっぷりグリットを入れて水はけをよくします。
★オーリキュラの鉢は、素焼きでもプラスチックでもいいようですが、
ショーオーリキュラは成長が遅いので、素焼きの鉢の方がよく、
アルパインやダブルは成長が早いので、プラスチックの方がうまく行くらしいですよ。
(ただし、プラスチックの方が水遣りに注意が必要。)
深鉢を使う理由は、種類によっては茎の根元の部分が土から5cm位上に伸び上がってくるためです。
(育てたことのある方は経験されていると思いますが・・・)
それと、鉢のサイズは直径7cmか9cmのものを使います。
★プリムラの仲間は、種から育てるのも簡単ですが、
日本で普通に手に入るオーリキュラの種は
たぶんPrimura pubescens (プリムラ プベスケンス)ではないかしらと思います。
日本のホームセンターや園芸店で売られている「ガーデンオーリキュラ」は、
実はオーリキュラではなく、Primura xpubescensプリムラ プベスケンスで、
厳しい条件が決められる以前に交配されたもののようです。
イギリスでもガーデンセンターで手に入る名前無しのものは、
オーリキュラと書いてあっても、プリムラ プベスケンスのことが多いのです。
でも、プリムラ プベスケンスにも可愛い花がいっぱいあって、
庭植えにしても丈夫だし、値段も安いし、
展示会に出すのを目的にするのでなければなんの支障もありません。
ただ、クリスマスローズ同様、呼び方の混乱はちょっと困るかもしれませんね。
(原種のオーリキュラ Primula auricula)
★ここでもう一つ説明を入れさせてもらうと、
Primula auriculaと書くと黄色い花の原種を指し、
大文字で始まるAuriculaと書くと、今回の話題になっているフローリストオーリキュラのことになります。
同じくオーリキュラに含まれるアルパインも他のalpine植物と区別するために、
Alpineと書く決まりになっているようです。
(もちろん、ラテン名ということではなく、愛好家たちの園芸上の呼び名ですけれども。
分類上はAuriculaも Primula × pubescensになるのでしょうから。)
英語だと一目瞭然なのですけれど、カタカナではその辺りがわからないので、
それも日本での誤解の元になってしまうのかもしれません。
★もう一つの大きな誤解は、名前が付いていれば「銘品」(って、日本では言うそうですね、びっくり!
ブランド物でさえあれば飛びつく日本人の特性が園芸界にもまかり通っているということでしょうか。)だと
思われているようですが、
名前付きのがなんせ2000以上もあって、
専門家に言わせると、その中でも質の悪いものがたくさんあるとのことです。
緑色の花が最も数も少なく増やすのも難しく、数年で色が褪めてしまう品種が多いのだそうです。
展示会に出すのが目的でなければ、オーリキュラはそれほど難しいプランツでもないので、
庭植えや鉢植えで、可愛い姿を楽しんで頂ければと思います。
日本には日本サクラソウの栽培の歴史がありますから、
同じプリムラの仲間であるオーリキュラにも親しみを感じる人が多いのではないでしょうか。