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冬庭に漂う香りはどこから?




10日間ほど降ったり止んだりしながら積もっていた雪が溶けて、
ようやく地面が顔を覗かせました。
久しぶりに庭に出てみると、甘い香りが漂ってきます。


雪の降り始める前に蕾が少し膨らみかけていたサルカコッカが、
雪の下で今か今かと出番を待っていたのでしょう。
一気に花を開いています。



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葉っぱも花も地味で目立たないこのプランツは、
冷気の中でしっとりと甘く、
それでいてどこか凛とした香りで人をふり返らせます。

植えた場所を忘れてしまっても、
目隠しをしていても、だいじょうぶ。
香りを辿って行けば、居場所がわかります。


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春から秋までの間、
世界からすっかり忘れられた存在のサルカコッカは、
日の当たらない庭の片隅で、
ひっそりと冬の訪れを待ち続けているのです。


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そして、季節は巡り、冬の到来です。

色の消えたさびしい庭に、
香りの彩りを与えてくれるこの花は、
暗くてうっとうしいイギリスの冬の庭に、
なくてはならないプランツになります。


玄関脇に植えておくと、
訪れる人を香りで迎えてくれる素敵なウェルカムフラワーになります。
「この香りはどこから?・・・」と、
周りを見回す人々にサプライズを与えてくれること請け合いです。
あるいは、暗いうちに家を出て、暗くなってから帰宅する人を
心に沁みる香りでそっと迎えてくれるそんな花かもしれません。

庭に続く出入り口の近くに植えておくと,
冬の間も庭に出る楽しみが増えます。

イギリスでは全国的にボックス(ツゲ)が病気にやられて
大きな被害にあっている昨今、
代わりに同じツゲ科のサルココッカを使うのはどうなのかしらと
思うのですが・・・、
個人の庭でこのプランツを植えているのは、
よほどの園芸好きかちょっぴり変人のみというのは、
なんとも悲しい事実です。



学名: Sarcococca hookeriana 'Digyna'   AGM
英名:  Christmas Box 、 Sweet box
和名:  サルココッカ(流通名)


Sarcococcaは、東アジア、東南アジア、中国からヒマラヤにかけての
湿潤な森や雑木林に約14種が自生していますが、
いずれも 雌雄同株(monoecious)のプランツなので、
雌花と雄花は同じ株に付きます。
花後には黒い艶やかな実が付きますが、
うちの庭では赤い実が黒く染まる頃には、
鳥たちのお腹に納まってしまうようです。

S.hookerianaは中国西部の自生種で、
種小名のhookerianaは、
有名な植物学者でありキューガーデンのディレクターであった
Sir William Jackson Hookerもしくは息子の Sir Joseph Dalton Hookerに
ちなんで名付けられたものです。

Sarcococcaと言うCが4つも入るおかしな名前は、
ギリシャ語の sarx(=flesh)と kokkos(=berry)から来ている
ようですね。



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S.hookerianaは少し紫がかったような細い葉ですが、
Sarcococca confusa(同じくAGMをもらっています) 
というつやのあるダークグリーンの葉のものもよく出回っています。


by lapisland2 | 2013-02-02 19:22 | Shrub