Emmetts Gardenのブルーベルを訪ねて 



これは、2010年春に Emmetts Gardenのイングリッシュ・ブルーベルを訪ねた時のものですが、
平らな雑木林に生えることが多いブルーベルが、ここではかなり急勾配の丘に広がっているのが面白いのではないかしらと思い、
再掲載しておくことにします。

再掲載の理由は他にもあるのですが、それはまたのちほど。


しばし、ブルーベルの花をお楽しみ下さいね。




4月22日、ケント州にあるナショナルトラストの Emmetts Gardenに行って来ました。
ここは19世紀の後半にFrederick Lubbockによって作られた庭園ですが、
彼はWilliam Robinsonの友人だったのでその影響が強く、
中国やヒマラヤなどの珍しい樹木やプランツなどもたくさん集められています。

今の時期はブルーベルでも有名なのですが、
まだ少し早いだろうとあまり期待しないで出かけたのに、
お天気に恵まれて、すばらしい光景に出会うことができて、ラッキーでした。
残念ながら、実際に目で見るその美しさ(や香り)は写真ではとても表わせませんが、
「ブルーベルのさざなみ」もしくは「青い海原」のお裾分けです。



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庭園のある場所は
この写真から想像できるようにかなりの高台になっています。
日本でなら、里山とでも言えるような場所ですね 。



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ブルーベルの広がっている場所は、崖に面した急斜面で、
その間に複数の小道が作られていて、
上からも下からもブルーベルが見えるようになっています。



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見渡す限りブルーベルの青い海原が続いていて、




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woodland全体がやさしく甘い香りに包まれています。



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近寄って見ると、
そり返った花弁がとても可憐で、妖精の花と言われるのも改めて納得できますよね♪



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ブルーベルのさざなみの中に所々、伐採したログで作ったこんなベンチが置かれています。
ブルーベルに取り囲まれて、そのやさしい香りに包まれて、
この人たちも幸せなひと時を楽しんでいるのでしょうね。



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大きな日本のモミジの樹とブルーベルが珍しい組み合わせになっています。




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前景のブルーベルの花の向こうは急斜面になっていて、
中景に霞んで見えるブルーの色はかなり深い谷底なのですが、
残念ながら写真には遠近が全く出てくれませんね。




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たま~にこんな白花が混じっています。
私が見つけたのはこの広い場所でたったの2輪だけ。



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ブルーベルの海原に所々白い波が立って・・・。
でも、お互いに邪魔せずに住み分けているようです。



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白い波はワイルドガーリック(Allium ursinum)。
こちらではブルーベルと前後する時期に、葉が広がって花をつけます。
小川のほとりやウッドランドの湿地のような場所がこの白い花で埋め尽くされます。
(匂いを別にしたら、この白い群生もとても綺麗ですよ♪)



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フタリシズカのようなチャラン属のプランツもブルーベルと住み分けていました。

(チャランって、調べてみたら原産は中国なんですね。
英国っていろんな所からやって来た植物が帰化を通り越して、
元からあったような大きな顔をして生えている、そんな不思議な国でもあります。)



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静かなwoodlandの中に聞こえてくるのは鳥たちのさえずりだけと言う至福のひと時でした。
そして、香りがなんとも言えないのです。
さわやかな甘さの本当にやさしい香りですよ。




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ここはたくさんの人が訪れるのに、柵も仕切りの綱もありませんでした。
唯一この場所にのみ柵がありましたが、これはブルーベルを守るためというよりは、
この辺りが急勾配の坂になっているため、人が摑まるための柵のようでした。



香りをお届けできないのが残念ですけれど、
ほんのちょっぴりブルーベルの森にいる雰囲気を味わって頂けたでしょうか。


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by lapisland2 | 2015-05-21 00:16 | Garden Visit + | Trackback | Comments(2)

イングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベルの違いについて





雑木林ではブナの樹が葉を広げ始め、
ブルーベルの花も盛りを過ぎて、代わりにシダが葉っぱを広げつつあります。




2007年頃に、日本の某有名園芸サイト(有名無名の超熱狂的園芸家たちの集る掲示板)に、
イングリッシュブルーベルについて書いたことがありましたが、
その時に日本ではこの花のことがどの程度知られているのかしらとネットを検索してみたら、
これがまさにオドロキモモノキサンショノキでした。

日本で栽培されているブルーベルのほぼすべてがスパニッシュブルーベルかそのハイブリッドで、
ネット上ではそのスパニッシュあるいはハイブリッドを「イングリッシュブルーベル」と記載しているのです。
正しい記載のあったのは、唯一球根の趣味専門家のサイトに短い記述があったのみでした。
(恐らく、ウィキペディアの『イングリッシュブルーベル』の日本語版もなかったように思います。)


そんなわけで、
『日本のサイトで「イングリッシュ・ブルーベル」として記載されているものが、
殆どすべて明らかにスパニッシュかハイブリッドなので、
本当のイングリッシュ・ブルーベルについて知っていただきたいと思って、書いています。』
と言うような書き出しで、以下のような詳細情報を入れたのでした。




(前文略)
ところで、「ブルーベル」と一言で言っていますが、大きく分けると
イングリッシュ・ブルーベル( Hyacinthoides non-scripta) とスパニッシュ・ブルーベル( H.hispanica) 、
そしてこの二つを掛け合わせたハイブリッド(H. x massartiana)があるのをご存知でしょうか。

non-scripta「書かれていない」という変な種小名は、ヒヤシンスとの区別のためにつけられたのだとか。
(皆様ご存知のヒヤシンスの伝説にあるAiAiと言う文字が、
ブルーベルの花には「書かれていない」と言う意味のようですね)



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                        (イングリッシュ・ブルーベル)


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              (イングリッシュ・ブルーベル:乳白色の葯が見えますね)

イングリッシュ・ブルーベルの花は、筒状で、先端はくるりと反り返っています。
葯は乳白色で、花の殆どが茎の片方についているので、下垂した状態になります。
葉はスパニッシュと比べるとかなり細いです。
花には甘い香り(ヒヤシンスをもっとデリケートにしたような香り)があり、
群生している場所では一面に強い芳香が漂っています。





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                     (スパニッシュ・ブルーベル)

スパニッシュ・ブルーベルの花は、筒と言うよりはベル型で、
先端は少しカールしている程度です。
葯の色は、咲き初めの頃は青色をしています。
花は茎の周り全体に付き、花茎は直立します。
(咲き切ると花の重みで垂れ下がることもありますが。)
葉はかなり広めで、香りは殆どありません。


イングリッシュ・ブルーベルの自生地は、イギリスの他に
ベルギー、フランス、オランダ、アイルランド、スペイン、ポルトガルですが、
その70%はイギリスの地に生えています。
イギリスではブルーベルの群生によって、森が Ancient woodland かどうかを特定することがあるくらい
重要な指標生物(ancient woodland indicator species)だとも言えます。

ところが、イギリスの庭(都会を取り巻く周辺)で見かけるブルーベルは、
殆どがスパニッシュブルーベルかハイブリッドで、
イギリス人でさえもその区別を知らない人がけっこういるようです。
スパニッシュの方が、見た目が派手で花も大きく、繁殖力も旺盛で、イングリッシュとの自然交配が進み、
イングリッシュ・ブルーベルは法律で保護されてはいますが、
純粋なイングリッシュは減少の一途を辿っているようです。
私の庭でも、植えてもいないのにそこここからスパニッシュが顔を出し、
見つけ次第抜きまくっているのですが、
球根が深く潜っていて抜き切れず翌春には数を増やして出現してきます。

うちの周辺は、車で走ると行けども行けども雑木林の中はブルーの海という景色が続きますので、
そんなに緊迫しているとも思えないのですが、
専門家の中には、地方によってはもうすでに戦いは済んだと、
イングリッシュブルーベルの完全敗北を宣言する人もいるようです。
RHSも、田舎ではスパニッシュやハイブリッドを庭に植えないようにと忠告していますし、
ナーサリーにラベルの表示をはっきりさせるよう指示しているとのことです。

もう一つ、イングリッシュ・ブルーベルが激減している理由は、
woodland(主に落葉樹で成り立っています。いわば日本の里山みたいなもの)を
コニファーの単一植林に変えてしまったことや、
落葉樹のcoppicing(コピシング)をしなくなった事もあるようです。

イングリッシュ・ブルーベルは Wildlife and Countryside Act 1981(野生生物及び田園地帯保護法)と
言う法律で保護されている種になります。
土地所有者が所有地から球根を掘り出して売買する事は禁止されていて、
野生の球根を自生地から採取することも犯罪になります。
この法律は1998年に更に強化され、野生の球根または種子のいかなる商取引も違法となっています。
(後文略)

[新しく書き込みのための文を作成するつもりでいましたが、
    あえてそのまま再掲載することにします。]


上の書き込みをしたあと、掲示板に集う人たちのさまざまなコメントで、
2007年の時点では、日本ではホンモノのイングリッシュの球根が手に入らないこと、
「イングリッシュ」と明記のある球根を入手して植えてもスパニッシュが出てくること、
詳しい情報がないことなどが明らかになりました。




それから約8年が過ぎて、改めてブルーベルのことを検索してみると、
どうやらイングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベルの違いというのは
だんだん認識されつつあるように思われます。
(でも、まだスパニッシュの写真を貼って、堂々とイングリッシュと明記しているブログも多いようです。)

また、ここ数年英国からイングリッシュ・ブルーベルの球根を輸入して販売するナーサリーも
出てきているようですが、
すでにスパニッシュが氾濫している日本に、イングリッシュ・ブルーベルを導入したところで、
ハイブリッド化してしまうことは間違いないのにと余計な心配をしてしまいます。

まあ、自生地ではない日本でいくらスパニッシュやハイブリッドが増えようといっこうに構わないわけですが、
ここ英国においては、滅亡への道をひたすら進みつつある自生種のイングリッシュ・ブルーベルを守るために、
庭にスパニッシュを植えるのだけは自重したいものです。

とは言うものの、スパニッシュの蔓延る勢いは恐るべきもので、
私の住む周辺でも、この8年間で民家の周辺はすでにスパ+ハイに征服され、
雑木林の周辺にまで占領地を拡大しつつあります。
しかもハイブリッド化すると、限りなくイングリッシュに近いものまで出現するので、
見極めるには DNAを調べないことにはわからないものまであるとのことです。

約300年前にイギリスに持ち込まれたスパニッシュ・ブルーベルは、
ガーデナーたちの無神経な手によって、次第にその領域を広げ、
今では英国中のブルーベルの森の6分の1にはスパニッシュが存在するまでになっています。
今の状態で行くと、50年以内に自生種のブルーベルは姿を消してしまうことになるようです。



8年前の記述の中に、
>落葉樹のcoppicing(コピシング)をしなくなった事もあるようです。

と書きましたが、
もう少し説明を付け加えると、
コピシングとは、樹木の高さを調整するために、ある程度の高さの所で毎年伐採を続けることです。
そうすることで、新しい枝の更新を図ります。
かつてはコピシングした枝で家具や日常用具を作ったり、炭焼きに利用したので、
雑木林は人々の生活になくてはならないものだったのです。
日本でも、一昔前に養蚕のために桑の木を毎年伐採していたのと似ていますね。
そして、雑木林や里山が時代の流れと共に廃れてしまったのは、いずれの国でも同じことです。

かつては、伐採後の林床には日がよく当たり、ブルーベルの花が咲くのに適していました。
そして、花が咲き終わる頃になると、入れ替わりに樹木の若葉が広がり始め、ブルーベルは休眠期に入ります。
自然はうまく調和し合い、人々の営みもブルーベルを守る役割を果たしていたのですね。

また、コニファーなどの常緑樹の植林では、林床にまったく日が射さなくなり、
ブルーベルは生き延びることができなくなってしまいます。



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私の住む周辺の雑木林は殆どが私有地ですが、
土地の所有者たちは木々の伐採をして日当たりを良くしたり、
下草刈りをしてブルーベルを守っていると聞いてきます。
ブルーベルの海になるには何世紀もかかるそうですので、
やはり里山同様、人がきちんと世話をしていかないといけないようですね。




とは言うものの、そういう努力も時すでに遅しなのかもしれません。

今年(2015年)発行のオックスフォード・ジュニア辞典では、
すでに「キンポウゲ」や「ドングリ」と共にこの花の名は姿を消してしまいました。
代わりに登場したのは、 「ブロードバンド」 や 「切り取りと貼り付け」などのコンピューター用語です。

残念ながら、「ことば」だけでなく、
英国の雑木林からイングリッシュ・ブルーベルそのものが姿を消すのも、
もう時間の問題のようです。
次世代の人たちは、特殊な眼鏡を掛けて、
コンピューターの作り出す架空のブルーベルの森を手探りで歩きながら、
人工的に作り出されたブルーベルの香りを楽しむことになるのでしょうか。




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by lapisland2 | 2015-05-18 06:54 | Bulb/Corm/Tuber/Rhiz | Trackback | Comments(8)

5月はブルーベルの香りで始まる



季節はどんどん駆け足で過ぎて行って、
嵐と共に桜も散ってしまいました。

好天気の長く続いた4月のせいで、今年は何もかもが早くて、
二週間ほど前から雑木林の中は、ほんのりとブルーに染まり始めました。




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あっという間に過ぎてしまうブルーベルの季節ですが、
幸いなことに、先週末からの雨と気温の低下で、少し足踏みをしていたようで、
うちの近辺では例年通り5月上旬の開花になったようです。
たぶん、この週末が見ごろだったかもしれません。




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残念なのは、今年は秘密のブルーベルの森に行けそうにもないこと。
そこに辿り着くには傾斜のきつい地道を
かなりの距離登って行かなければならないのですが、
雨でも降ろうものなら、泥に足をとられて身動きできなくなってしまいますので、
今の私の脚では少々難しいのです。




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人に見せるための森ではないので、森の中をゆっくり歩きながら、
遠くまで続くブルーのさざなみとそのやさしい香りを楽しんでいても、
聞こえて来るのは鳥たちのさえずりや栗鼠の駆け回る音だけで、
人に出会うことはめったにありません。




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ブルーベルの花には、随分と思い入れがありますので、
改めて書くことになると思います。



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by lapisland2 | 2015-05-11 22:09 | Garden Visit + | Trackback | Comments(2)