啓蟄とともに、イギリス南東部も急に暖かくなって来ました。
昨年10月以来、家から殆ど出ることもなく、
二階の窓から庭を見下ろすだけの毎日が続いていましたが、
ようやく5ヶ月ぶりで庭に出ることができました。
鳥たちのコーラスが高らかに響き渡り、
眩しい光の中で、スノードロップやクロッカス、シクラメン・コウムなどが満開になっています。
その中でも、際立って鮮やかな輝きを見せているのが Eranthis、
こちらではウィンター・アコナイトと呼ばれるキンポウゲ科の小さい花です。
残念ながら、南東部ではもう花の時期は過ぎつつあるのですが、
一箇所だけ出遅れた花が咲き始めていましたので、急いで写真を撮りました。
時間帯が写真を撮るのにいい時間ではなかったので、
光りの当たり方がスポットライトのようになってしまいましたけれど・・・。
イギリスの庭で見かけるウィンター・アコナイトは、
たいていがEranthis hyemalisという
バルカン半島、イタリア、南フランスの落葉樹林に自生する種になります。
日本のセツブンソウの仲間ですが、セツブンソウより少し大きく、
花も葉も艶やかな光沢があります。
(年が明けるとスノードロップに先駆けて真っ先に蕾を付けてくれるので、
私は福寿草を連想してしまいます。)
10cmほどの茎の上に3cmほどの黄色い花を付けますが、
花びらのように見える部分は萼片で、
その萼片を取り巻くように切れ込みの深い苞状葉をつけます。
開花の頃になると根元に根生葉が出てきます。
自生地の環境から見て、庭でも落葉樹やシュラブの下が最適の植え場所になります。
石灰質の土が最適ではありますが、それほど土を選ばないように思います。
日向でも半日陰でも育ちますが、水はけのよい土に植える必要があります。
スノードロップと同じく、tuber(塊茎)が乾燥するのを嫌うので、
こちらでは 'in the green' と言うのですが、
葉っぱの付いている状態の間(春先)に植えつけるのが
一番よく定着するように思います。
(私の経験では、秋に乾燥したtuberを植えても余りうまく育ちませんでした。)
太陽が顔を見せることの少ない英国の冬の庭では、
スノードロップと共に春への希望の光りを与えてくれる花です。
学名: Eranthis hyemalis AGM
英名: Winter aconite
和名: キバナセツブンソウ (黄花節分草)
[追記]
☆地中海東部原産の Eranthis cilicicaを キバナセツブンソウ、
そしてこのEranthis hyemalis をオオバナキバナセツブンソウというのですが、
日本でよく出回っているものはこの二つの交雑種のようですね。
最新の分類では、この二つは同一種として扱われることになり、
学名は E. h. Cilicica Groupと表記するのが正しいとのことですので、
ここでは一応和名は キバナセツブンソウとしておきます。
☆ウィンター・アコナイトのaconiteはAconitum(トリカブト)に含まれる毒のことで、
ウィンター・アコナイトも有毒植物です。